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『素敵な経年劣化』

2025年2月2日
先日 法事があり 久方ぶりに親族たちと会いました。
この親戚とは近くに住んではいるものの
私が中学を出たあたりからめっきり連絡などすることも少なくなって
気づけば10年以上 経過してしまいました。
近況報告や 昔の思い出話など話題は尽きず、
話している間にほぼ一日が過ぎてしまいました。
忘れていた子供時分のことを 次々とものすごい勢いで思い出し、
記憶の中の自分や周りの人間の変化ぶりに多少の切なさをしみじみ感じながら、
ワイワイ思い出話ができるという その小さな幸福を噛みしめました。
あの頃知る由もなかった祖母や祖父の気持ちを 今になって知り、
懐の深さと愛情に胸が熱くなり
遅まきながら 心から感謝でいっぱいになりました。
親類と話した尽きない思い出の多くが 『家』を背景とするものでした。
親戚の家は30年ほど前に一度建て替え済みですが、だんぜん建て替え前の方が印象強く残っています。
建て替え前の親戚の家は 障子扉で囲まれた居間につながる ひんやり暗い廊下、
お勝手のすりガラスの引き戸は滑りが悪くて開け閉めが大変だったのを覚えています。
正方形で水色の風呂釜は 子供の私がおしりをつけて座ると溺れそうなほどに深かったなぁ。
私の家と同じくらいに古かった親戚の家。
建て替えたときは 置いてきぼりを食った気もしたし、ホントに羨ましかったです。
あっちこっちの短い瞬間の思い出を寄せ集めてつなぎ合わせ「こんなことあったよね」と話し、
「そう思うと、変わったよねぇ~」とお茶を飲む。
これ、なんで こんなにもほんの少し切なくて でも純粋に楽しいのでしょう。
それは過ごした過去の記憶を 「過ごした人と過ごした場所」で共有するからだと思うのです。
一軒家、借家、アパート、マンション、形状は何であれ全ての人に『育った家』があります。
家は家族にとって特別な場所です。その特別な場所で過ごした時間は確実に『家』に浸み込みます。
楽しい時間も、そうでない時間も、何でもない時間も。
記憶のすべては『浸み込んだ時間』だったんです。
私が育った家も古い家です。子供のころから古さは変わらず、
今もその古さに磨きがかかっています。
親戚が家を建て替えた当初は子供ながらに親戚の家がうらやましかったけれど
私は私の育った古い家が好きです。
不便の極みを感じることも多いですが、でもやっぱり好きなんです。
それは 私の両親や祖父母たちの頃からの深く浸み込んだ時間と
私が過ごした時間、そして近年甥っ子が生まれてから一緒に過ごした時間と
何層にもなる積み重ねがあるからです。
ここまでの流れからすると 『古い家が良い』となりそうですが、実はそうではなくて。
私の仕事は 『新しい家』を造るお手伝いです。
お客様の新しいお家にはいつも 新しくて ピカピカしていて、見ているだけでワクワクします。
間取りや住設、内装や外壁、コンセントの位置や玄関扉を決める打合せの日は
一人で勝手に妄想爆走中のことも多いです。
今は 躯体構造、機能、システムなども含めて
『家』という建築物を知れば知るほど そのワクワク感は強くなっています。
新しく建てたお家は 何の味付けもない 真っ新な状態です。
お引渡ししたその日から 施主様ご家族の時間が始まり
着実に止まることなく 一秒一秒が深く浸み込んでいきます。
そしていつかお家は時間を経て 必ず劣化していきます。
新しいシステムや 便利な住設も出てくるでしょう。
傷や変色など古くなったと感じる箇所も多くなると思います。
ですが 美味しいお味噌汁には お出汁が必要なように、
心地よい家には 時間の浸み込みが必要なんです。
新しいお家は ワクワクするけれど それだけなんです。
住み心地がいいとか 安らぐとか そういった部分はまだまだこれからなんです。
何十年も経って いつか素敵な経年劣化を感じるようになったら、
そろそろ楽しい思い出話のできる、『良い家』の出来上がりです。
経年する・育てる・紡いでいく時間を大事にしていただきたいのです。
だからこそ 太陽住宅総合研究所は涙を堪えてローコストな家を提案します。
建ててからローンに苦しんでいては 素敵な経年劣化は無理です。
本当の意味で『良い家』を建ててほしいから太陽住宅総合研究所は ローコストなんです。